心に残る、歌うような舞

今日は北京オリンピック・フィギュアスケート男子フリーの演技を観た。



日本の至宝の3選手はもちろん、海外の素晴らしいスケーター達が一同に集い頂点を争う、4年に一度の世界最高の舞台。



ここ最近は技術の進歩が目ざましく、4回転時代へと突入。どの選手もプログラムにさまざまな4回転ジャンプを組み込んで戦っていた。


特に上位選手達の技の完成度はひときわ素晴らしく、高難度なプログラムに何本もの4回転ジャンプが組み込まれ、観ているものを惹きつける。



だけど今回わたしの心に1番残った選手は4回転を飛ばなかった選手だ。



アメリカ代表のJason Brownさん。
曲は映画『シンドラーのリスト』。
4回転を飛ばす、流れのある繊細で美しい演技で物語を歌うように舞っていた。



助走も助走に見えない、流れの中で生まれる美しいジャンプ。一つ一つのステップ、ポーズ、回転、溜め、間の取り方、表情、全てが音楽的でため息が出るくらい美しく、映画の世界観を全身で奏でているように見えた。
フィギュアはスポーツだから勝つ為に4回転は必要なエレメントかもしれないけど。
もちろんアスリートとしてチャレンジは素晴らしい事だし、観たいとも思う。


だけどフィギュアスケートの持つ特性として、技術だけではない『芸術的な側面』も要素に含まれるという事が評価をややこしくする。


『ジャンプの助走』の時の、ジャンプに集中するあまり一瞬音楽や表現から離れてしまう『素』の表情が見えてしまうと興醒めしてしまうわたし。


Jasonさんの演技はそれが無く、終始音楽的で流麗だった。


得点よりも、メダルよりも。
表現者として最高に美しい、心に響くスケートを見せて頂いた。



『シンドラーのリスト』
戦争という名の狂気の中、無意味に人が殺されていく理不尽に行き場のない悲しみと怒りを感じた映画。


かつてロシアの女子選手リプニツカヤさんも素晴らしい演技を見せたこの曲。映画の中で登場する、赤い服の少女をイメージした衣装で滑った姿が忘れられない。


わたしもいつかこの曲で踊ってみたい。表現してみたいと思った。



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